太陽系が銀河の残骸”S1ストリーム”を通過、暗黒物質の発見に期待

2019年3月1日


universe flickr photo by shadowwwww shared under a Creative Commons (BY-SA) license

ダークマター、いわゆる暗黒物質は現代の宇宙物理学における最大の謎だ。宇宙の総エネルギーの26.8%を占め、私たちや星々を構成するような”通常の物質”の5~6倍ほど存在するにも関わらず、物質や電磁波とほとんど相互作用を起こさないので、現在まで観測することに成功していない。(参考記事:推定総量は観測可能な物質の約6倍、正体不明の「暗黒物質」とは?)

しかし、数年後に暗黒物質を観測できるチャンスが訪れることが明らかとなった。私たちの太陽系が「S1ストリーム」と呼ばれる”矮小銀河の残骸”を通過するからだ。

2013年に打ち上げられた位置天文衛星「ガイア」の観測データを解析すると、天の川銀河に属する20億個の星のうち3万個ほどの星が、天の川銀河にある星の大部分とは反対方向に運動しており、さらには星の化学組成も天の川銀河の星々とは異なる性質を持つことが明らかとなったのだ。これらの星々はかつて天の川銀河と衝突した矮小銀河に由来する星々であると考えられている。

この動画は100億年前に私たちの天の川銀河と小銀河「ガイア・エンケラドス」が衝突したときのシミュレーションだ。”衝突”したといっても、互いの銀河の星々はとても離れているため、まるで煙が混ざり合うように星同士が衝突することはほとんど無い。天の川銀河は、このような銀河との衝突を繰り返して現在のような規模にまで成長していったと考えられている。

このシミュレーションの最後に注目すると、ガイア・エンケラドス由来の星々は天の川銀河の大部分に広がりつつも、局所的な”まとまり”として残っていることがよく分かる。このような”まとまり”の1つが、暗黒物質の発見に大きな期待が寄せられている「S1ストリーム」なのだ。
「S1ストリーム」は、10億年前に私たちの銀河系と衝突した矮小銀河の残骸で、100個ほどの恒星が数千光年にも渡って広がっている。

一部の報道で”3万の星々で構成されている”と説明されているが、これはおそらく位置天文衛星「ガイア」によって観測された逆行する星の数を、そのままS1ストリームの規模と誤解したものだろう。

なぜ暗黒物質の発見が期待されるのか?

銀河の形成には暗黒物質が大きな役割を担っていると考えられており、このS1ストリームにも銀河であったときの名残として、多くの暗黒物質を”引き連れて”いると考えられている。

現在、S1ストリームは秒速約500kmの速さで接近しており、数年後に私たちの太陽系はS1ストリームの”暗黒物質の嵐”に突入する。このとき、日本の「XMASS実験」をはじめとして、世界中で行われている暗黒物質の観測実験で、暗黒物質を検出できる可能性が非常に高くなると考えられているのだ。暗黒物質の謎はもしかしたら、ここ数年のうちに解き明かされるかもしれない。

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