気象を操る――人工降雨技術と気象兵器

2018年10月20日


Purple Rain flickr photo by mripp shared under a Creative Commons (BY) license

人の力で気象を操る――昔では考えられなかった、まさしく神のような力を人類は科学によって手中に収めつつある。 実際に、北京オリンピック開会式は雨の予報であったが、晴天となるように中国政府は開会式数時間前に雨を降らせる小型のロケットを約1,100発打ち上げ、開会式では見事に晴れとなった。

そもそも雨は、大気中に漂う微粒子を核として氷の結晶が大きく発達し、重くなって溶けながら落下する現象である。つまり、雨を多く降らせるための方法の1つとしては、氷の結晶の核となる微粒子を増やせば良い。

そこで用いられるのがヨウ化銀だ。ヨウ化銀は氷の結晶に近い構造をしているので、氷の結晶がよく成長しやすい。ロケットなどを利用してこのヨウ化銀を雨雲に打ち込むと、雨粒が多く発生して雨が降りやすくなる、というわけだ。他にも、ドライアイスを雲に散布させることによって雲の温度を下げて、氷の結晶をより早く発達させるという方法もある。


Rain cloud flickr photo by State Farm shared under a Creative Commons (BY) license
1900年代初期、人工降雨を仕事としていた男がいた。アメリカのチャールズ・ハットフィールドは「大砲を撃ったあとには雨が降る」という言い伝えから独自の降雨技術を開発し、各地で数多くの人工降雨を成功させた。しかし、彼はこの技術を隠し続けたため現在でも謎に包まれている。

ヨウ化銀によるこの人工降雨技術を利用すれば、雨雲から雨を降らせることもできるし、あえて雨を降らせることによって狙った時間を晴れにすることもできる。まさに革新的な技術であるが、当然ながら良いことばかりとは限らない。ヨウ化銀には弱い毒性があるので、環境への悪影響が懸念されているのだ。

さらには、人工降雨技術を兵器に転用される恐れもある。1967年のベトナムではアメリカ軍が人工降雨技術によって豪雨を発生させ、ホーチミン・ルートを遮断させる極秘作戦「ポパイ作戦」を実行し、戦況を有利に進めることに成功した。その11年後となる1978年には環境改変技術敵対的使用禁止条約が発効され、現在では気象兵器の使用は禁止されているが、もちろん全ての国で署名または批准されているわけではない。今後、気象兵器が使用されないという保証はどこにもないのだ。原子力もそうであるが、革新的な技術ほど私たちは慎重に、より平和的な利用を模索しなければならない。


Chernobyl Unit 4 Reactor (02710158) flickr photo by IAEA Imagebank shared under a Creative Commons (BY-SA) license
チェルノブイリ原発事故では、大気中に放出された大量の放射性物質を落とすためにヨウ化銀による人工降雨が行われた。

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