寝たきりになることもある原因不明の「慢性疲労症候群」とは?

2018年10月8日


Rachel Waters flickr photo by ethanhickerson shared under a Creative Commons (BY) license

誰にでも、ぐったりとして「もう動きたくない」と思った経験はあるだろう。慢性的な疲労に悩まされている人はそう少なくは無いだろう。しかし、数か月もの長い間、原因不明の強い疲労感に悩まされているのなら、ある病気を疑ってみるといいかもしれない――

慢性疲労症候群(略称:CFS)は、近年になって注目され始めた病気だ。1988年にアメリカの疾病対策センターによって初めて報告が行われ、次第に世界中の国々で発症例が報告されるようになり、その実態がようやく明らかになった。
慢性疲労症候群の患者はある日を境に、突然全身の筋肉に力が入らなくなり、強い疲労感とけん怠感に襲われて何も手につかなくなる。また、思考力の低下や微熱・頭痛、筋肉痛やリンパの腫れなどの症状がみられる場合もあり、のどの痛みや関節痛などが現れる場合もあることから風邪と間違えて診断されることもある。

患者は20~50歳の人に多く見られ、女性に多くみられるのも特徴で、全体の6~7割を占める。いずれも発症前は心身ともに健康で、特に大きな問題の無かった人がほとんどだ。患者にとって強い疲労感を感じるようになった日付は明確であることが多く、風邪などの感染症に感染してから疲労感などの症状が現れるようになった、という症例も多く報告されている。患者は次第に仕事や家事などの日常生活に支障をきたすようになり、症状が重い場合は寝たきりとなって介助者が必要になる場合も多い。

CFSの患者が抱える苦悩

この病気の最も大きな問題は、全く原因が分からないということだ。本人は仕事ができないほどの極度の疲労感やけん怠感に襲われているにも関わらず、医療機関で症状を訴えても身体に異常が見られないために適切な治療が受けられないのだ。さらに周囲の人々から「怠け」や「甘え」「仮病・詐病」といった誤解も生じやすく、必要な精神的ケアが受けられない場合もある。日常生活において誰かの手助けが必要な状態であるにも関わらず、周囲からの理解が得られないことも多いのだ。


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また、病気の原因が分からないということは、診断そのものを困難にさせる。慢性疲労症候群は身体に異常がみられないことから精神疾患として診断されてしまう場合も多く、患者は自分に本当は何が起きているか分からないまま、あまり効果的でない治療を受け続けることになってしまう。

そもそも日本では、慢性疲労症候群を専門的に診療できる医療機関が少ないために病気を証明するための診断書すら取得できないことも多い。その結果、行政からの支援が受けられないため、患者は経済的にも追いつめられてしまうのだ。

原因の解明や有効な治療法に関する研究が難航している慢性疲労症候群であるが、患者を救うための道は確実に広がりつつある。近年では慢性疲労症候群(CFS)という名称が、あまり重篤性が伝わりにくいという理由から、イギリスやカナダなどで使用されている筋痛性脳脊髄炎(略称:ME)と併せて”CFS/ME”と呼称するはたらきかけもある。名称を変えるだけでも、慢性疲労症候群の認識が改められ、より世間からの注目を集めることができるのだ。

日本での慢性疲労症候群の罹病率は0.1~0.3%とされており、全国で最大推計38万人がこの病気に罹患していると考えられているが、その多くはうつ病や自律神経失調症として診断され、適切な治療が受けられていない可能性が高いという。1人でも多くの人が、この病気について知ることこそが、慢性疲労症候群に苦しむ人々を救うための第一歩となるのだ。

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