観測することが観測結果に影響を及ぼす科学のジレンマ

2018年7月4日

かん-そく【観測】
1.自然現象を精密に観察・測定し、その変化や推移を調べること。
2.物事を注意深く見て、変化や成り行きを予測すること。
――小学館『デジタル大辞泉』より

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科学の世界では「観測することで、その観測結果に影響を与えてしまう」という事象が数多く存在する。観測者効果といわれるこの現象は、観測対象に干渉しなければいけないこと、そして観測者がヒトという動物である以上は決して避けては通れない。

心理学

ヒトが動物である以上、その心理的な影響はあらゆる科学分野に影響を及ぼす。例えば研究者たちは、その研究において自らの仮説を裏付ける結果や、より興味深い結果となること、そして功績による名誉などについて期待するような心理的作用(認知バイアス)が少なからず生じる。その結果、好ましい結果が強調されたり、本来は注目すべき行動などに気付かないといった実験結果の誤差が生じてしまうことがある。

生物学

動物の体にビデオカメラやGPSなどの記録装置を取り付けて、動物の行動や生態などを明らかにする実験手法はバイオロギングといわれているが、記録装置の重さや設置個所によって生物の姿勢や行動に変化が生じ、測定結果に影響を及ぼすことがある。この影響は観測対象が小型であるほど特に顕著となる。

考古学

今から4,500年前に巨大な岩山を掘って作られたというギザのスフィンクスは、その長い歴史の中で何度も首まで砂漠の砂に埋もれ、その度に何度も掘り返されたという。最後に発掘調査のために砂から掘り返されたのは1920年代だが、このときスフィンクスのみに関心が向けられていたために周辺にあるアクエンアテンの別荘の階段やツタンカーメンのレストハウスなどといった新王国時代の貴重な構造物を壊してしまっていたのだ。遺跡などの発掘調査などでは、調査活動そのものによって調査の手掛かりや遺跡・遺物の価値を失ってしまう可能性が常にある。

天文学

地球外生命の発見は、人類が宇宙開発を進める理由の一つである。しかし、探査機に地球由来の生命体が紛れ込んでいた場合、探査を行う惑星や衛星を地球生物で汚染させてしまったり、探査結果に地球由来の生命体が混入しかねない。NASAはこれを防ぐために探査機を送り込む前に徹底してクリーニングを行っている。通常の微生物はこのクリーニングや宇宙の環境下でほぼ死滅してしまうが、実際にNASAのクリーンルームで発見されるほど強い耐性を持つ微生物も存在する。(参考記事:NASAのクリーンルームで発見された新種微生物「Tersicoccus Phoenicis」とは?
)
NASAでは地球由来の生物から惑星や衛星を、そして宇宙由来の生物から地球を守るために惑星保護官という専門職を設けて対処にあたっている。

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