関節を鳴らしたときの「ポキッ」という音の正体とは?

2018年6月12日


Andrew’s hands flickr photo by puzzlement shared under a Creative Commons (BY-SA) license

退屈なときや仕事に取り掛かるとき、ついつい指などの関節を鳴らしてしまうことはないだろうか?「クラッキング(cracking)」または「ポッピング(popping)」と呼ばれる、関節から音を鳴らすこの動作が癖になってどうも止められないという人は多いだろう。この関節から聞こえる「ポキッ」という音はどのようにして生じているのか?

人間の関節部分には関節腔(かんせつくう)と呼ばれる空間があり、その内部には潤滑剤のはたらきをする粘性の高い関節液(滑液)で満たされている。このような構造によって関節では氷の上で氷を滑らせたときに匹敵するような滑動性が実現されているのだ。

クラッキングをするために関節を曲げたとき、関節腔の容積は大きくなるが、内部を満たす関節液の量は変わらないため、関節腔内の内圧は真空近くにまで低下する。すると、関節液の一部が気化して微小な気泡が生じ、これが一瞬のうちに壊れて弾ける「キャビテーション」という現象が発生する。つまり、関節を曲げたときに鳴る音の正体は関節腔内で発生したこのキャビテーションによるものなのだ。

この理論が発表されたのは1971年だったが、実は近年まで関節が鳴る発生機序についての論争は続いていた。クラッキングを行ってからも関節液に微小な気泡が残っていることが確認されていたからだ。しかし、アメリカのスタンフォード大学の研究によって、クラッキングにより発生した微小な気泡の一部は残ることをシミュレーションを用いた実験により突き止め、2018年3月に発表した。現在のところ、キャビテーションによる発生機序は矛盾なく説明することができる。


Chiropractor’s Hands X-Ray flickr photo by planetc1 shared under a Creative Commons (BY-SA) license

気化したガスは一説によると二酸化炭素や窒素であると考えられている。同じ部位で連続してクラッキングを行うことができないのは、関節を鳴らしたあと、これらのガスが再び関節液に溶け込むまで15~30分ほどかかるためだ。

ところで、クラッキングをし続けると関節が太くなったり、関節炎になるというのは本当なのだろうか?確かに、クラッキング時にはキャビテーションが発生した衝撃によって関節部に大きな負荷がかかっていることが推測されており、様々な症状をきたすことが懸念されているが、実際の悪影響についてまだしっかりと検証されていないのが実情だ。

ちなみに、カリフォルニア州のドナルド・L・アンガー氏は60年もの間、左手の指関節のみクラッキングを毎日続けても関節炎にならないことを証明した。この”功績”により彼は2009年のイグ・ノーベル医学賞を受賞している。

しかしながら、過度なクラッキングは関節部だけでなく神経などに影響を与える可能性があるため、あまりクラッキングを行わないことに越したことはないだろう。

あなたにおすすめの記事
無くなってしまったはずの手足が痛む「幻肢痛」とは?
健康寿命に大きく影響する「ロコモティブシンドローム」とは?
盲腸は本当に切っても大丈夫なのか?
死海の浜辺にある様々な塩の結晶とは?

医学カテゴリの最新記事