熊と遭遇してしまった場合の正しい対処法とは?


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童謡『森のくまさん』では、出会った熊がお嬢さんに対してなぜか「お逃げなさい」という。こんな親切な熊ばかりならばいいのだが、環境省の資料によれば毎年50人前後、多い年で100人以上が熊に襲われており、うち数名が命を落としている。近年ではトレッキングブームに伴って人と熊が遭遇する機会も増えてきた。もし熊と出会ってしまった場合、どうすればよいのだろうか?

最も有名な対処法は「死んだふり」だろう。恐らくは「動かないものに興味を示さない」という考えや、「野生動物は死体を食べない」という習性に基づいているものと思われるが、実は逆効果だ。熊はそもそも人を食べようと思って襲ってくるわけではなく、多くは至近距離で出会った熊がパニック状態、もしくは防御手段として襲ってくるケースがほとんどなのだ。ただでさえ人に遭遇して興奮しているクマに、倒れるなどして大きなアクションを起こすと襲い掛かってくる危険性が高くなってしまう。


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出遭った熊が子連れである場合は特に注意が必要だ。母熊は子供を守るために非常に神経質になっている事が多く、積極的に人を襲う傾向にある。

「木に登る」という方法も考えられる一つの手段ではある。しかし子熊は木登りが得意だし、熊が木に登らないという保証はどこにもない。特に大きな個体は立ち上がると2m近くにもなるため、木に登る場合には最低でもこれ以上は登らなくてはならない。そもそも登れるような手頃な木が近くにあるかどうか、あったとしてもそこまで安全にたどり着けるかどうかを考えると万能策とは言えないだろう。

「走って逃げる」という方法は、ごく一般的に思われるかもしれない。確かに、向こうの熊がこちらに気付いていない場合はこれで危険を回避できるだろう。しかし、クマと至近距離で出会ってしまった場合はこの場合もまた逆効果だ。急な動きは熊を刺激させるうえに熊の走る速度は時速30~40kmにもなるため、全力で走ってもまず逃げ切れないだろう。また、動物は本能的に相手の背後が無防備であることを知っている。実際に報告された事例のなかには後ろを向くと襲ってくる様子を見せたために、対面状態を保って身を守ったという話もある。

では、熊にもし遭遇してしまった場合にどのような行動をとれば良いのか?
最も有効であると考えられているのは「熊から目を離さないようにゆっくりと後退する」というものだ。この方法では熊への刺激を最小限にとどめ、より安全に退避することができる。さらに、帽子や荷物など、そっと地面に置いて下がると注意を逸らすことができる場合もある。しかし、相手は動物だ。急激に接近してくるような攻撃的な個体も報告されているため、絶対に助かる対処法は存在しないといえる。


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まず、前提として熊と会わないようにすることが大切だ。笛やラジオ、鈴などで人間がいることを知らせること、熊が近くにいるような証拠(新しい糞や鳴き声など)がある場合は周囲の警戒を怠らないこと、熊を遠くで見かけた場合は引き返すなど安全を優先すること、遭遇してしまった場合は「熊から目を離さないようにゆっくり後退する」。もし襲われた場合はできるだけ回避し、頭部を守るように心掛けよう。また、熊用の撃退スプレーなどをあらかじめ準備しておくことも大切だ。
熊だってきっと、人間とは出遭いたくないだろう。