加熱しても死滅しない食中毒の原因菌「ウェルシュ菌」とは?

2017年11月29日

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火から下して、ゆっくりと味を染み込ませた煮物は美味しい。カレーも一晩寝かせると美味しくなる。これは具材が酵素の働きによって分解され、うま味成分が全体に溶出するためだ。しかし、保管方法に気を付けなければ、後で十分に加熱しても食中毒になってしまうことがあるという。夏場は特に要注意の「ウェルシュ菌」による食中毒とは?

ウェルシュ菌は土壌などに存在する自然界ではありふれた細菌だ。また、人や動物の腸に存在するような一般的な腸内常在菌でもある。しかし、ウェルシュ菌が増殖した食品を食べるなどして大量に体内に取り込まれると腸管内で増殖してエンテロトキシンという毒素を産生し、食中毒を引き起こす。

一般に広く知られているO157サルモネラ菌,黄色ブドウ球菌などとは異なり、食中毒の発生件数こそ少ないが1回の食中毒事件における患者数が他の細菌と比べて非常に多いのが特徴だ。

1994~2004年における厚生労働省の統計では1事件あたり、O157やO111などの病原大腸菌平均25.2人サルモネラ菌平均19.1人黄色ブドウ球菌平均36.6人であるのに対しウェルシュ菌平均83.7人と圧倒的に多い。ウェルシュ菌の食中毒発生現場は給食や旅館,飲食店など大量の食事を扱う場合が多く、家庭での発生は実のところ少ない。しかしウェルシュ菌はどこにでもいる細菌であるため、食品の管理を怠れば家庭でも食中毒を引き起こしてしまう危険性は十分にある。

ウェルシュ菌の最も厄介な特性の一つが「芽胞(がほう)」だ。通常、食品を十分に加熱すれば食中毒を引き起こすような多くの細菌は死滅するが、ウェルシュ菌では一部が芽胞と呼ばれる耐久性の高い状態で生存することができる。芽胞状態のウェルシュ菌は増殖できないが、100℃で1~6時間の加熱にも耐えるため調理過程でウェルシュ菌を完全に死滅させることは不可能である。

芽胞状態で過ごしたウェルシュ菌は、再び温め直したときの刺激によって芽胞状態から”発芽”して食品内で増殖を始める。そして、このウェルシュ菌に汚染された食品を食べることで食中毒が引き起こされるのだ。潜伏期間は6~18時間、主な症状は腹痛下痢などで稀に嘔吐発熱などの症状が出ることもあるが、通常は1~2日で回復することが多い。

ウェルシュ菌が最も発育する温度は43~47℃で、加熱調理後にゆっくりと冷めていくような場合に増えやすい。特に大きな鍋などで大量に調理すると容器内部がこのような温度で維持されやすく、食品内が無酸素状態になりやすいので嫌気性細菌であるウェルシュ菌が増殖しやすくなる。すぐに食べない場合は常温のまま放置せず、小分けしてから冷却させるといいだろう。

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