劣化ウラン弾の性能と疑惑

2017年4月2日


140627-A-SJ786-008 flickr photo by 1st BCT, 1st CD shared under a Creative Commons (BY-ND) license

原子力発電所は、原子力によって生み出されるエネルギーを平和利用したものの代表だ。その核燃料にはウラン(またはプルトニウム)が使われるが、通常のウランは核燃料としてそのまま使用することができない。ウランには核分裂を起こしやすい「ウラン235」と核分裂を起こしにくい「ウラン238」という2つの同位体が知られているが、地球上に存在するウランのうち約99.3%は核分裂を起こしにくい「ウラン238」であるからだ。

ウランを核燃料として使用するためには核分裂を起こしやすい「ウラン235」の割合を3%~5%以上にまで濃縮させなければならない。そこでウランの核濃縮が行われるが、このとき「劣化ウラン」と呼ばれる副産物が生成される。

劣化ウランは英語で”Depleted Uranium”と呼ばれるが、”Depleted”には「使いつくした」「枯渇した」という意味があり、構成の約99.8%が核分裂を起こしにくい「ウラン238」である。劣化ウランは濃縮ウラン1tの製造で約10tもの量が発生してしまう上にほとんど使い道がなく、先進国は大量の劣化ウランを抱え込んでしまった。そこで劣化ウランの活用方法として考え出されたものが「劣化ウラン弾」なのだ。

劣化ウランは合金として砲弾に組み込まれる。ウランは密度が高く、同じ体積の鉄より2.4倍も重いため貫通力が非常に強い。さらに着弾後の高温状態では酸素と反応して燃焼するため、火災効果も備わっているのだ。

劣化ウラン弾は湾岸戦争,イラク戦争でアメリカ軍がボスニア紛争,コソボ紛争などでNATOがそれぞれ使用し、その性能と威力を発揮した。しかし、その帰還兵や戦地の住民にある異変が現れた――

帰還した兵士や地元住民たちの間で極度の慢性疲労や先天性異常,がん,白血病などの病気が多発していたのだ。これらは「湾岸戦争症候群」や「バルカン症候群」と呼ばれ、劣化ウラン弾による放射線被ばくが疑われた。

劣化ウランは核分裂を起こしにくい「ウラン238」であるため、自然界に存在するウランよりも放射線量は低くなるが、劣化ウラン弾の燃焼により発生した微粒子を吸引することによる内部被ばくは以前から懸念されていた。

しかし、健康被害の状況は明確に把握できておらず、化学兵器や戦争による悪環境が原因であるとする主張もあり、劣化ウラン弾との因果関係は依然として不明のままだ。平和利用の影で繰り返される戦争と悲劇に終止符はいつ打たれるのだろうか?

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