なぜ「癌」は英語で「カニ」を意味するのか?


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悪性腫瘍のうち、上皮性のものは英語で”cancer ”という。ドイツ語では”krebs”で、いずれも「カニ」を意味する言葉だ。最初に癌を「カニ」と表記したのは紀元前400年頃の医学者であるヒポクラテスであると言われている。

ヒポクラテスは自らの著書の中に乳がんの腫瘍を、ギリシャ語で「カニ」を意味するカルキノス(karkinos)と表現しており、これが現代まで受け継がれているのだ。癌が英語で”cancer”と呼ばれているのは、「医学の父」とも呼ばれているヒポクラテスの影響力に他ならないのだ。

しかしながら、なぜ腫瘍を「カニ」と表現したのかは定かではない。腫瘍周辺の病変した血管や組織が足を広げたカニのように見えたという説や、進行して膨れあがった腫瘍がカニの甲羅に見えたともいわれている。いずれにしても、紀元前の書物にある言葉の意味を知ることは叶わないだろう。

日本では江戸時代の外科医で、世界で初めて全身麻酔による乳がん手術を成功させたという華岡青洲の乳がん治療の記録書に「乳岩」という表記がみられ、乳がんのかたい腫瘍部を「岩」と表現したものが由来であるとされている。現在の「癌」という字も、岩の異字体である「嵒」に部首のやまいだれがついたものになっている。

「カニ」と「岩」――表現はそれぞれだが,発見はいずれも乳がんで共通している。がんの歴史は,乳がんから始まったといえるかもしれない。