タスマニアデビルを脅かす奇妙な病気とは?


Tasmanian Devil flickr photo by Buffy May shared under a Creative Commons (BY-SA) license

タスマニアデビルはタスマニア島のみに生息するフクロネコ科に属する有袋類で、フクログマとも呼ばれている。家畜を襲ったり死肉すら食べる習性や独特の鳴き声から”悪魔”と呼ばれ、人々から忌み嫌われてきた。

家畜を守るために企業や政府らが始めた駆除活動によって同じフクロネコ目であるタスマニアタイガーが絶滅。それからは次第にタスマニアデビルを保護する声が高まり、個体数は徐々に回復の兆しを見せていた。


Strahan, Tasmania flickr photo by Steven Penton shared under a Creative Commons (BY) license
タスマニア島はオーストラリア大陸南東部に位置していている。面積は九州の約1.65倍,北海道の約77%にも相当する大きな島だ。

しかしそんなタスマニアデビルに追い打ちをかけるようにある恐ろしい病気が猛威を振るい始めたのだ。それがデビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)である。この病気はなんと伝染性のある癌なのだという。

DFTDは当初,腫瘍ウイルスによるものだと考えられた。腫瘍ウイルスはがんの形成に関与するウイルスで、ヒトではB型肝炎ウイルスによる肝臓がんやヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんなどが知られている。

DFTDの研究が進むにつれ驚くべき事実が判明した。なんと癌細胞自体が伝染性を有していたのである。タスマニアデビルは雌や餌の奪い合いで激しく噛み合うことがある。また、交尾前に相手を噛む習性が知られている。このとき感染した個体から癌細胞が直接、未感染の個体に転移することでDFTDが伝染していくと考えられている。

DFTDに感染すると,顔面や頸部などに好発して腫瘍ができる。多くの個体は目や口周りにできた腫瘍によって餌を取ることが難しくなり、徐々に衰弱していく。転移も起きやすいことが知られており、多くの個体は発症から半年以内に死亡してしまうという。病気の流行によってタスマニアデビルの個体数は激減。現在は絶滅危惧種に指定されている。

しかし、タスマニアデビルも驚きの対抗策をみせる。タスマニアデビルの繁殖は通常は2歳以降からだが、ある集団のタスマニアデビルでは1歳や1歳未満の雌が繁殖を始めているという。DFTDに感染した個体の多くは2~2歳半までに死んでしまうが、2歳未満から繁殖を行うことで個体数を維持、または増やすことができる。

DFTDの研究はタスマニアデビルの保護活動における最前線で行われており、人々は全力で問題の解決に取り組んでいる。タスマニアデビルもこの恐ろしい病気に懸命に立ち向かっているのだ。