鳥類研究における「バンディング問題」


Great Tit on Tray flickr photo by Wildlife Boy1 shared under a Creative Commons (BY) license

鳥類の研究で行われる方法としてバンディングと呼ばれる手法が世界中で行われている。これは野鳥をかすみ網などで捕らえて標識となる足環(バンド)を付ける調査手法であり、再び回収された個体の発見場所や経過年月からその生活史を明らかにすることが目的である。

しかし,この研究手法に疑問を抱いている人々がいる。彼らはバンディングに際して行われる調査の手法は正当なものではないと主張しているのだ。バンディングで使用される足環は調査する鳥類のサイズに合わせて適正な大きさ・重量のものが選ばれる。ある調査論文によると小型の鳥類に装着する金属製の足環の重量は装着する鳥の体重の0.36%~1.95%と全て2%未満であり、その大部分が1%未満であるという。


Sedge Warbler flickr photo by Wildlife Boy1 shared under a Creative Commons (BY) license

同論文では足環の重量は小型の鳥類における糞の重量と大差なく、小型鳥類の重量は1年のうちに数%~20%の変動がみられるため、2%未満という足環の重量は十分に小さい、ということが結論付けられている。一方で、バンディング問題を提唱する”反対派”はこう主張している。”ペットボトルに入った水を飲んで山登りをするときと、水の入ったペットボトルを足につけて山登りをするとき、どちらの方が負担が大きいのか?”

成人女性の平均体重は約50kg。その1%の重量は約500gに相当する。この重さは、500mlの水が入ったペットボトルの重さに相当する。人に例えると0.5kgの重さのアンクルウェイトを一生のあいだ装着し続けるようなものだ。小鳥は飛んでいる間、常にその負担が脚にかかることになるが本当に影響はないのだろうか?このような状態で、果たして正確なデータを得ることができるのだろうか?

バンディングは、欧米などにおいては伝統的かつ一般的な鳥類研究の手法である。しかし、島国である日本は欧米などと比較して調査効率は極めて低い。

そのうえ、標識調査のデータを確認できるという環境省・自然環境局、生物多様性センターの「鳥類アトラス」は2017年3月時点においてアクセスできない状態となっている。※2018年確認されました。

問題は他にもある。バンディングを行う「バンダー」の多くは実施訓練を積んで山階鳥類研究所による講習会に参加して認定を受けたボランティアだ。通常、かすみ網を使用した鳥類の捕獲は禁止されているが認定を受けたうえで鳥獣捕獲許可申請を行うことで特別にかすみ網の使用が許可されている。バンダーはかすみ網などを設置して野鳥を捕獲しバンディングを行ってから再び自然へとかえすのだ。

バンダーの多くは鳥類の扱いに細心の注意を払ってバンディングを行っているが、一部の悪質なバンダーはウェブサイトや書籍で使用する画像の撮影のためだけにかすみ網を使用し、捕獲した野鳥を粗雑に扱っているという。SNSの発達に伴い、くちばしを掴んで持ったり、翼を引っ張って記念撮影するといった写真が多く掲載されるようになったことについて反対派は懸念を強めている。

使用されるかすみ網も、必ずしも安全に捕獲できるわけではない。網にかかって暴れたり、網から外す作業において負傷したり死んでしまう鳥が、やはり一定数存在するのだ。反対派では”このようなリスクを含んでまで成果のあがらない調査を続ける必要があるのか?”という声も挙がっている。


Hybrid Pied x Variable Oystercatcherflickr photo bySeabird NZshared under aCreative Commons (BY-ND) license

しかしながら、小鳥に対する研究においてはバンディングに頼らなければならないのも事実だ。バイオロギングなど、高度な調査が困難である以上は長い年月と多くのデータが必要になってくる。得ることのできた情報だけを頼りに、手探りの中で少しずつ真実を明らかにしようとしている。
リスクや影響,研究の成果――この「バンディング問題」については様々な情報が交錯し,賛否両論あるところだが、いずれにせよ”確かなことを少しずつ明らかにしていく”ことが解決への糸口となるかもしれない。