神秘的な光を放つ「ホタルイカの身投げ」とは?

日本海でも500種類以上の魚介類が獲れるという富山湾。2013年,八重津浜で撮影された写真が全世界で注目を集めた。

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Photo by YUKISON ⒸYUKISON / Ken Ohki

ゆらめくような,神秘的な青白い光が海岸線を浮かび上がらせる。この光の正体は,わずか体長6cm程のホタルイカ。通常は深海に生息しているが,3~5月になると海岸付近で産卵が終えたホタルイカが湧昇流(ゆうしょうりゅう)と呼ばれる流れに乗って一斉に浜に打ち寄せられる「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる現象が見られる。写真はその時のものを,高感度で長時間露光して撮影したものだ。

ホタルイカは,主に触手の先端にある数個の発光器官からルシフェリン-ルシフェラーゼ反応によって青く発光する。しかし,他にも多くの発光物質が関与していると考えられており,青色に混ざって緑色の光も検出されているという。緑色の光の役割や,どのような発光物質が関与しているのかホタルイカの発光については未だ多くの謎に包まれている。

ホタルイカの名が示す通り,発光メカニズムはホタルと同じではあるが,光るのはわずか一瞬だ。ホタルイカが発光を行う理由について,従来までは敵を威嚇して身を守るためと考えられてきたが,敵に自分の位置を発光によって教え,すぐに逃げるというフェイントの役割を果たしていることが最近の研究で明らかになった。

また,ホタルイカはいわゆる”腹側”の方を下に向けて泳ぐが,この腹側の体表にも発光器官があり,わずかに発光しているのだ。深海に生息する生物の中には,深海に届くわずかな光を背景に獲物の影を捉えて捕食するものが多く存在する。ホタルイカは,腹側をわずかに発光させることによって海面側の光と同化させて身を守っているのだ。この仕組みはカウンターイルミネーションと呼ばれ,深海生物に多く見られる特徴の一つである。


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ホタルイカの身投げと同じ頃,富山湾ではホタルイカ漁が行われる。通常は茹でて出荷されるホタルイカであるが,現地では刺身で食べることができ,竜宮そうめんと呼ばれるホタルイカの足の刺身が地元の名物となっている。生食は可能だが,内臓に含まれる旋尾線虫の一種が皮膚爬行症や腸閉塞などを引き起こすため,調理の際には注意が必要だ。特にホタルイカを生きたまま食べる”踊り食い”は大変危険である。

上記の写真により有名となった富山湾では,毎年多くの観光客が集まるという。しかし同時に,夜間の騒音や海岸付近の違反駐車,ゴミによる汚染が問題となっている。訪れる際は地域の人々や自然への配慮を忘れずに。