かつてオクロに存在したという天然の原子炉とは?

2016年7月3日


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1972年9月,フランスの原子力庁はアフリカ・ガボン共和国のオクロにかつて天然の原子炉が存在したという驚くべき調査結果を発表した。
通常のウランの核分裂反応は原子炉による制御が必要であるが,ガボン共和国にあるオクロのウラン鉱床ではなんと約20億年前に60万年ほどの間,自律的な核分裂が起きていたというのだ。
事の発端は1972年6月,フランスのピエールラット・ウラン濃縮工場で行われたウラン燃料を製造する際に行われる分析で,ガボン共和国のオクロの鉱床から採掘されるウランの同位体の存在比に異常が見つかったのだ。

自然界ではウラン235と呼ばれるウランの同位体の存在比は通常0.72%であるが,オクロで採掘されたウランに含まれるウラン235の存在比は最小で0.44%しかなかったという。フランス原子力庁はあらゆる分野の研究者を総動員させてこの不可解な現象の解明に乗り出した。その結果,かつてオクロに天然の原子炉が存在していたという驚くべき結論に至ったのだ。
20億年前のオクロではウラン235の存在比は3%を上回り,核分裂が可能な濃度にまで達していたという。また,この濃度は現在の原子力発電所の軽水炉におけるウラン燃料の濃度とほぼ同じだ。

核分裂にはこうした核分裂反応を起こしやすい濃度のウラン燃料の他に,核分裂で放出される中性子を減速させて反応を安定化させるための減速材が必要だが,オクロの鉱床には地下水が流入し,これが減速材として機能していたという。

また,オクロの鉱床には中性子を吸収するようなカドミウムやホウ素などの元素がほとんど存在しなかったため,核分裂をより安定して維持する事ができたというのだ。

このような条件を満たした天然の原子炉が存在し得ることは1956年に日本人地球化学者の黒田和夫が”約21億年前の地球で不純物の比較的少ないウラン鉱床では連鎖反応が臨界状態になる”ことを理論的に予測し発表していたが,このオクロの天然原子炉が発見されるまでは学会には受け入れられなかったという。
この天然原子炉が核分裂によって放出したエネルギーの総量は核分裂反応で消費されたと考えられるウラン235の量から産出すると100万kW級の原子力発電所の原子炉5基を1年間運転させた際に発生する熱エネルギーに匹敵するというのだから驚きだ。

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