人はどのようにして味を感じるのか?

com_Sandwiches with cheese, lettuce and tomato on a plate

前回の記事で常人より味覚を強く感じるスーパーテイスターと呼ばれる人々についてご紹介したが、そもそも人はどのようにして味を感じるのだろうか。
人の味覚受容体は舌にある。舌の表面には舌乳頭(※1)と呼ばれる小さな突起があり、ここに味を感じる味蕾(みらい)と呼ばれる構造が数多く分布している。この味蕾は舌だけでなく喉や軟口蓋まで存在しており、個人差もあるがおよそ7,000個も分布しているという。

味蕾には味孔と呼ばれる小さな孔が開いており、この中に3種類の味細胞と呼ばれる受容細胞が数個存在している。ここで食べ物の分子やイオンが取り込まれ、内部の化学反応により電気信号として味神経を通じて脳へと伝達されるのだ。
人は舌を通じて基本五味の甘味・うま味・苦味・塩味・酸味を知覚することができる。味を感じる舌の構造は複雑で、現在でも未解明な部分が多い。

鼻をつまんでものを食べたり、風邪をひいてしまった時に味が分からなくなってしまうのはなぜなのか?

人は味覚だけでなく嗅覚も使って味を認識している。食物から出た揮発性成分(気体になって発散しやすい物質)が嗅いだ匂いや、口内から鼻に抜けた匂いなどの嗅覚情報が舌で感じる味覚情報と統合して、脳内で「風味」を生み出してはじめて人はその味を感じる事ができるのだ。
食材はできるだけ新鮮なものを使った方が良いと言われるのはこの揮発性成分が時間の経過とともに徐々に失われていくためである。食材が新鮮なうちに使うと揮発性成分を多く含むためより美味しく感じる事ができるのだ。出来立ての料理が美味しいのも同じ理由である。
また、加熱は必要最低限にとどめておくことも大切である。加熱を行うと揮発性物質が活発に行われるため風味が増すが、加熱しすぎると揮発性物質が放出され過ぎてしまい、食品の風味が失われるばかりか、ビタミンCなどの栄養素の損失も起こり得るからだ。人がどのようにして味を感じるのかを知ることで食事をより楽しくするための工夫が見えてくる。

味を感じるのはもちろん人間だけではない。他の動物には非常に興味深い仕組みを持つものがいる。

例えばネコは甘味をほとんど感じない。また、ハエは前肢に味覚受容体があり、手を擦るような行動は肢に付着した汚れを取り払って味覚をより感じやすくするためだ。また、ナマズはなんと全身に味覚受容体を持っている。1820年代に味蕾が最初に発見されたのも実は魚からであり、人の舌から発見されたのはその40年後というのだから驚きだ。
しかしながら、人がより味を楽しむことができるのは理屈ではなく、食材を作ってくれた生産者や料理を作ってくれた人の真心ではないだろうか。
※1 舌乳頭のうち糸状乳頭と呼ばれるものだけは味蕾は分布していない。