古来より愛されてきた牛乳の歴史とは?

2016年3月25日


flickr photo shared by MIKI Yoshihito (´・ω・) under a Creative Commons ( BY ) license学校法人八紘学園 北海道農業専門学校 様

朝、目を覚まして1杯の牛乳を飲む習慣を持つ人は多いだろう。私たちが毎日飲む牛乳は、いつから飲まれるようになったのかご存じだろうか?
――人類が動物の乳を飲むようになったのは1万年前のことだ。しかし最初は牛ではなく、家畜化させた羊のミルクを飲んでいたという。牛の家畜化は羊に遅れて約8,500年くらいに中東で始まり、牛から搾り出した牛乳は神への捧げものとして貢いだ。当時、牛乳は貴族達の飲み物であったという。

約6,000年前のインドではすでに重要な食品であったとされ、多くの人々に飲まれていた。そして約2,400年前のこと、釈迦が厳しい苦行を断念し心身ともに衰弱して樹の下で休んでいるとスジャータという娘が樹神と思い、乳がゆを供物として捧げたという。その後、疲れを癒した釈迦はそのまま悟りを得たのだという。牛乳がなければ、もしかしたら仏教は誕生していなかったのかもしれない。

日本に牛乳が伝わったのは645年頃のこと。『新撰姓氏録』(しんせんしょうじろく)によれば、中国から渡来した医師である善那(ぜんな)が孝徳天皇に薬品として牛乳と、その加工品を献上したのだという。これが日本における初めての牛乳飲用といわれている。

その後の701年に制定された大宝律令によって乳戸(にゅうこ)と呼ばれる皇族のための搾乳場が50戸ほど京都や奈良を中心として設けられられた。徐々に酪農が広まると,牛乳を煮詰めて水分を除いて固められた「酥(そ)」と呼ばれる、現代のチーズやヨーグルトのような乳製品を税として納めることを定めた「貢酥」という制度が927年に制定された。

このように日本では当初、牛乳は薬品の一つとして位置づけられ、貴族や皇族だけが飲めるとても貴重なものであったとされている。当時の貴族の日記には「虚弱な体質を補い下気するもの」と書かれており、日本に現存している最古の医学書である「医心方」には牛乳について疲労回復効果や美肌効果があるという記述がみられる。また、飲む前に煮沸することが注意書きされており、現代の殺菌処理と同様に当時から牛乳の衛生面について配慮が行われていたと考えられている。牛乳は平安時代の終わりまで飲まれたが、牛よりも戦に用いる馬の生産に力が注がれるようになり、朝廷の力の衰えに伴って牛乳の歴史は一度区切りを迎えることになる。

再び歴史が動き出したのは江戸時代中期の1727年、8代将軍である徳川吉宗が、オランダ人の獣医から 馬の治療薬に牛乳や乳製品を勧められ、千葉県嶺岡に牧場を作ってインドから白牛を3頭輸入して放牧を行った。また、牛乳から白牛酪(はくぎゅうらく)と呼ばれる前述の酥(そ)と同じものを作った。 65年後の1792年には牛の数は70頭以上にまで増え、一部は江戸に移動させて白牛酪の製造を始めた。 白牛酪は将軍や大名の間で滋養強壮剤や結核に効く薬として重宝されていたという。

江戸時代末期には乳牛を飼い、一部牛乳を売る人まで現れたが、一般の人々に広く飲まれるようになったのは明治時代に入ってからとなる。 開国後に日本に来た多くの外国人の姿を見て「大きな体格を作るのは牛乳である」と考えた前田留吉はオランダ人から飼育や搾乳の技術を学び、1863年に横浜で搾乳所を開いて本格的な牛乳の販売が行われた。

政府の洋風化政策や収入を失っていた武士達の収入源として乳牛の飼育や牛乳の販売が普及し始め、特に明治天皇が牛乳を2回ずつ毎日飲んでいるという内容が新聞で報じられると牛乳の飲用は全国的に大きく広まったという。
その頃はブリキ製の缶で量り売りをしていたが、1888年には東京の牛乳店で初めてガラス瓶が採用され、1905年頃には牛乳の販売はほとんどがガラス瓶で販売されるようになった。

また、1920年には東京の麹町小学校の給食に初めて牛乳が登場し、ガラス瓶からコップへ流してストローで飲んでいたという。一般的な学校給食での牛乳の普及は第二次世界大戦の終戦後となる1958年頃からとなる。
1956年にはテトラ型の紙パック牛乳が初めて販売され現在知られている四角形の紙パック牛乳は1961年以降に使われ始め、東京オリンピックでの採用やスーパーマーケットの発展に伴って急速に普及して以降、牛乳は私たちの生活に深く関わってきた。世界中の人々にとっても牛乳は貴重な栄養源であり、そして酪農は大きな収入源ともなっている。人類の歴史は、牛乳と共にあるのだ。

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