入山料・シェルパ族・放置される遺体――意外と知られていないエベレスト事情とは?

2016年3月21日


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今からおよそ4000万年前,インド亜大陸ユーラシア大陸と衝突し巨大な山脈が形成された。 これがヒマラヤ山脈の誕生である。 その山脈の一つ,世界最高峰を誇る山がエベレストだ。
この2つの大陸にはテチス海があり,山脈の形成に伴い海底にある石灰岩地層が隆起してできたのでエベレストの頂上では,ウミユリなどの化石の破片などが見つかっており,4億8,000万年前石灰岩でできている。実は,エベレストの頂上は元々海底だったのだ。

エベレストの本当の標高は8850m?

標高は8,848mで,当然のことだがエベレストは富士山の2倍以上の標高を誇る。現在の公式となっているこの標高は,今から半世紀前となる1954年に三角測量という目視を利用した測定方法により算出された値なのだ。
アメリカの研究チームがGPSを使って標高を測定したのは1999年のことだ。その標高は8850m。現在の公式記録よりも2m高い値となっている。ヒマラヤ山脈は現在も変動を起こし続けており,積雪などの影響もあってエベレストの標高は常に変化し続けているのだ。
また,2005年に中国政府が発表した高さは8844.43±0.21mであった。ちなみにこれは氷雪の厚みが差し引かれているのだという。

エベレストの語源は人物名

この厚みまで考慮すると現在の標高8,848mにほど近い。標高は8,848mで覚えていても差し支えなさそうだ。
最初にエベレストの標高を測定したのはインド測量局だ。1852年に初の測量が行われ,標高は約8,840mあることが分かっていた。現在の「エベレスト」という名称は当時のインド測量局が,前局長である”インドの測量学の父”ジョージ・エベレストにちなんで名付けた。エベレストは測地学者であり数学者で,三角測量の大事業を完成させた業績により1861年にはナイトの称号も与えられている。

ちなみに,世界で2番目に高い山は標高8,611mK2。この名称はインド測量局による測量の際に,カラコルム山脈の山々に対して測量番号としてそれぞれK1,K2,K3・・・と順に名称を与えていったことに由来しており,Kカラコルムを表している。K2ではなくゴドウィンオースチンと呼ばれることがある。

エベレストの名称は他にもあり,ネパールでは「世界の頂上」を意味するサガルマータ,チベットでは「世界の母神」という意味のチョモランマという名称で呼ばれ,人々から敬い崇められているのだ。


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エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイ

エベレストへの挑戦は1921年,今から約100年前に始まった。イギリスの登山隊は多くの犠牲を払いながらも登頂に挑み続け,ついに1953年、登山隊メンバーはエドモンド・ヒラリーテンジン・ノルゲイの2人を地上から天に最も近い頂上へと立たせた。初挑戦以来実に9回目で成し遂げた快挙であった。

「あなたはなぜ山に登るのですか?」という質問に対して「そこに山があるからだ」という問答は有名だが,これは1921年,1922年,1924年の3回にも渡り、エベレストに挑んだイギリス登山隊のメンバーであるジョージ・マロリーの言葉だ。(質問とその答えにある“山”とは“エベレスト”を指している)マロニーは1924年の挑戦で行方不明となりその後の捜索で遺体となって発見された。マロニーが登頂に成功したかどうかについては明らかになっていない。
現在では多くの人々がエベレストに挑戦できる環境が整い,エベレスト登頂成功回数は6,000回近くにもなる。

エベレストの高額な入山料

エベレストは標高世界一だが,その入山料世界一だ。入山にはネパール側チベット側の2つのルートがあるが,入山にはそれぞれの政府に入山料を支払わなければならない。例えば,ネパール側では2015年時点で1人あたり1万1000ドル。これでも値下げされた方で,前の年は1人あたり2万5000ドルだった。2002年より前なら1人あたり7万ドルというのだから驚きだ。

屈強なエベレストのガイド「シェルパ族」

入山料と共に,登山に必要不可欠なのはシェルパの存在だ。シェルパは,ヒマラヤ登山で雇用されるガイドまたはサポートを行う人々のことで,元々はネパールのエベレスト近くに住むシェルパ族を指していたが,近年ではエベレストに限らず登山におけるガイドやサポート役をシェルパと呼ぶこともある。世界で初めて登頂に成功した1人,テンジン・ノルゲイもチベット人のシェルパなのだ。
シェルパは低酸素濃度でも並外れた身体能力持久力を有しており,特にエベレストの登頂には欠かせない。エベレストの地形を理解しており,自分の体重を超える荷物をも運び,その際の消費カロリーは一般人よりも少ない。エベレストで同行するシェルパはシェルパ族だけではないものの特にシェルパ族別格なのだという。
さらに,シェルパ族は登山時に何らかの危険が迫った際に甲高い耳鳴りが聞こえるのだという。シェルパに従って下山をし,災害を免れたこともある。しかし,最近ではシェルパの人々の待遇が問題視されている。

シェルパは経済的な理由から家族の生活の為に命がけで登山者のサポートを行っている者も多い。上記にもある通り,エベレストでは高額の登山料が徴収されるものの,それと比較してシェルパに対しての政府の支援は不十分だ。現在,シェルパ達は死亡やケガの補償金の引き上げを政府に訴えている。


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初の女性登頂者、最高齢登頂者はいずれも日本人

エベレストは現在,民間でも登山ツアーが企画されているほど必要な手続きを行えば誰もが挑戦できる山となった。これにより,数々の日本人登山家がエベレストに挑戦しそして多くの登頂成功を果たした。
女性で世界初となるエベレストの登頂に成功したのはなんと日本人である。当時35歳の田部井淳子さんは1975年に女性で初めてエベレスト登頂を成し遂げた。また、田部井さんは女性で世界初7大陸最高峰登頂者でもある。田部井さんは現在でも登山を続けており,多方面で活躍している。

また,世界最高齢でのエベレスト登頂に成功したのも男女ともに日本人なのだから驚きだ。三浦雄一郎さんは80歳で,渡辺玉枝さんは73歳でエベレストの登頂に成功しておりギネスブックにも認定されている。また,最年少記録は男女共に13歳なので,エベレストの最高齢最年少67歳もの開きがあるのだ。

エベレストのゴミ問題

エベレスト登山民間に広く浸透している一方で,大きな問題となっているのはゴミ問題だ。初めてエベレストの登頂に挑む人々には,各所に廃棄されたゴミの山を見てショックを受ける人も多いという。エベレストの命がけとなる登山では,所持品は少しでも軽いほうがいいのだが,多くの登山者によって年間数十トンを超えるゴミがエベレストの登山ルートに廃棄されているのだ。酸素ボンベが各所に転がり,排泄物は低温のため微生物による分解が進まないのだという。
ここで問題となるのはゴミの回収である。 ただでさえ難しい登山において,さらに多くのゴミを回収し下山するには相当の負担が強いられることになる。さらに回収が困難なのはエベレストで命を落としたかつての挑戦者の遺体だ。

エベレストに放置される遺体

エベレストの登山ではほぼ必ず数体もの遺体に遭遇するほど多くの遺体が今なお回収されずに放置されているのだ。なかでも有名なのは通称「グリーン・ブーツ」と呼ばれるインド人の登山家ツワング・パルジャーの遺体で,彼の遺体は登山ルートの目印にもなっているほどだ。
現在では,シェルパを初めとする多くの人々がゴミ回収のためのエベレスト登山を行っている。また,政府はエベレスト登山者へのゴミの持ち帰り回収を同時に呼び掛けている。

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