ラジウム温泉やラドン温泉の放射線は安全なのか?

2016年3月12日


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福島原子力発電所の事故から今年で5年目となる。事故以降は放射線の性質や危険性についての説明が各メディアを通じて広く行われた。放射線が身近な存在である事を改めて認識し,周辺地域や健康診断の放射線の影響について事故以来,考え直す方も増えてきている。

ここで問題となるのは日本に古くからあり,世界各地にもあるラドン温泉やラジウム温泉の安全性についてだ。これらは放射能泉であり,ラジウムラドンなどの微量の放射性物質を含んでいる。その放射線による影響は大丈夫なのか?

このような放射能泉は「ホルミシス効果」による健康効果を期待した温泉なのだ。ホルミシス効果とは,微量の放射線が健康に良い影響を与えるというもので,具体的には微量の放射線によって生じた活性酸素に対して,体内の抗酸化酵素を作る遺伝子が活性化し、身体の抗酸化作用を高めるのだという。ちなみに活性酸素は細胞の損傷老化に大きく関わっている。

放射線泉及びホルミシス効果に関しては様々な実験によって検証が行われている。健康効果が確認された例も報告されているが大きな問題は放射線による人体への影響だ。

自然界に広く分布しているウランの崩壊によってラジウムが生成し,さらにこれが崩壊する事によってラドンが生成される。このとき,各崩壊過程ではα線という放射線が放射される。α線は透過力は低いが電離作用が強いため人体への影響は大きい。放射線泉の成分であり,放射性物質のラドンは気体で、吸入して肺で内部被ばくを起こしやすい。内部被ばくは外から受ける外部被ばくより放射線の影響は大きくなる。また,α線による強い電離作用とも重なり放射線による人体への影響はより大きなものとなる。WHO(世界保健機関)は禁煙に次いで,肺がんのリスクを上昇させる要因として,その被ばく量の低減に取り組んでいる。

ラジウム温泉やラドン温泉の放射線は大丈夫なのか?という疑問に対する答えだが、確かに放射能泉の放射線量低いものの,多くの事例において想定される放射線量と健康被害の関連性が未解明であるのが現状である。どの程度の放射線量ならば安全で,どの程度の放射線量ならば危険なのかという明確な線引きは難しいのだ。しかしながら,科学的知見に基づけばこれらの放射能泉の人体への影響は無視できるレベルであるといえるだろう。

放射能泉の放射線が健康に良い影響または悪い影響だけを与えるという極端な考え方ではなく良い影響も悪い影響も理解した上で,放射能泉を利用しよう。

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